(奈美×あびる)不完全な蝶

奈美に続いてあびるは玄関をくぐった。木製の靴箱に手をかけ靴を脱ぐ奈美をあびるはボッーと見つめる。
「上がって上がって」奈美に誘われるようにあびるが靴を脱ぐ。奈美の家に来るのはこれが初めてだった。
「先に部屋行ってて。私はジュース持ってくから」奈美は階段を指さして言った。
「うん。分かった」二階に上ると半畳程の空間があり前が壁、その両側に扉がある。廊下は無く二つの部屋の入り口があるだけだ。
左の扉を開け、あびるは中に入った。
「普通の部屋だなあ」奈美の部屋に入りあびるは呟いた。窓からの陽射しが部屋を照らす。
壁に沿って置かれた本棚。その上のCDコンポ。本棚の隣には質素な机があり、教科書が上を埋めていた。
あびるは机の向かいのベッドに腰かける。これからすることを考え、少し顔に赤みがかかる。しかし赤くなるだけで表情が崩れることはない。
普段から感情を表に出すほうではなかった。だから周りからはよく冷静な女の子と思われがちだった。
階段を上る音が聞こえる。
「開けてえ」奈美が扉を弱く蹴っている。あびる扉を開け、再びベッドに腰かける。奈美はジュースを乗せたお盆をベッドの前のテーブルに置くとあびるの隣に座った。


「今日はありがとね。私のために」
「いいよ。奈美ちゃんのお願いことだし」あびるは素っ気なく言ったつもりだったが、奈美にはそれが嬉しかった。
「でね、本当にして良いんだよね? 」恐る恐るあびるに聞く奈美。うつ伏せ気味のあびるの顔を覗く。
「うん。無理そうだったら途中で言うし大丈夫」抑揚のない真っ直ぐな声であびるは言った。
「で、でも」奈美がそわそわとベッドのシーツを遊ぶ。あびるは奈美の落ち着きのなさに腹が立っていた。
初めに私を誘ったのはあなたなんだから、もっと積極的になればいいのに。
あびるは昨日のことを思い出していた。

放課後。帰り支度をしていたあびるに話し掛けたのが奈美だった。ちょうど今のようにそわそわしながらお願いがあると頭を下げてきた。
いつになく真剣な表情の彼女にあびるはいったん席につき直しかしこまって話を聞いた。
なかなか話し始めない奈美にことの重大さが計り知れなくなり緊張が高まる。口を開いたのはそれからしばらくしてからだった。


「あのね、私普通が嫌なの」
「知ってるよ」
「だからあびるちゃんに協力してもらって、普通じゃなくなりたいの」
「そういうことね。いいよ、私に出来ることなら協力する」少しでも力になれるのなら。そう思ってあびるは承諾した。
「で、何をすればいいの? 」それを聞くと奈美は恥ずかしそうに耳許に口を寄せてきた。
初めは冗談だと思い、吹き出しそうになった。しかし奈美は至って真剣な顔で請うようにあびるを見つめていた。
私とエッチをしてほしい。
弱々しい声で耳打ちをした奈美の息の暖かさは承諾して良かったのかを確かめるようにあびるの耳にいまだ残っている。
呆けた顔で見てくるあびるに奈美は付け加えた。
「か、可符香ちゃんに言われたの。初めは可符香ちゃんに相談したんだけどね、そしたら周りより早く大人になればいいって言われて。
話を進めていく内に相手はあびるちゃんだろうって… 」
また彼女の仕業か。あびるは頭を抱えた。一体何を考えているのか。楽観主義者のようでいて計算高い。
何を企んでいるのか、もしくはいないのか。あびるには毛頭も分からなかった。
だが、それ以上にあびるには引っ掛かることがあった。


「初めは何をしたら良いのかな」奈美はシーツを指でいじりながらあびるを見る。上目遣いで顔を真っ赤にした奈美があびるには一回りも二回りも年下に映った。
あびるは何も言わずにシーツをいじる奈美の手を握った。まるで後ろから叩かれたように奈美が驚く。
初々しいなあ。あびるは思った。家に来るまでは私に全て任せてと意気込んでいた姿が滑稽によみがえる。
手を取り、指を一本ずつ器用に絡ませていく。結んだ手を徐々に肩まで上げていき、二人は向かい合う。
「奈美ちゃん」春風のように優しくあびるは名前を呼んだ。相手の手の震えが可愛らしかった。
「好きだよ」視線を逃さないように握った手とは逆の手で奈美の頬を顎を持つようにそっとつまむ。
こくりと奈美が頷く。事前に盛り上げるために雰囲気を作ろうと言っていたのだ。
奈美はそれを思い出したのだろう。うん、と相づちをうった。
唇を重ねる。手汗で拳が滑る。あてただけのキスにあびるは酷く緊張した。
「したね」嬉しそうに奈美がポツリとこぼした。あびるはそれに笑顔で応えた。
そこから少しずつ慣れていった二人は緩急をつけながら互いの唇を味わった。
もっとする。そう言うと奈美はあびるの制服に手を伸ばした。


あびるのネクタイを緩め、ボタンに手をかける。一つずつ外される度にあびるは友達という階段を踏み外していくように思えた。
しかしあびるは全てを受け入れ、ついには上半身は一糸まとわね姿に晒される。
手を背に回し、あびるの胸に顔を埋めた奈美。あびるは奈美の頭を撫でた。
あれはいつのことだったろうか。二人で下校をしていた時だった。土手を歩く二人の前に一匹の犬が目に入った。
鎖に繋がれて飼い主と散歩をしているその犬は赤と黄色のストライプ柄の幼児服を着ていた。
正確には巻いていたと言えるような雑な着こなしだった。どうせ着せるならしっかり尻尾用の穴開けとけよ。
あびるは通りすぎた犬を見てそう思った。ふと奈美を見ると、彼女が言った。
「犬に服着せるの可哀想とか言う人がいるけどさ、それなら首輪だって十分可哀想だよね。
そもそもペットにしてる時点で犬に自由なんかないのに、変なとこで犬に気を遣う人って嫌いだな」
奈美の顔は切なそうだった。あびるにはその時の奈美がとても新鮮に見えた。普段何も考えてないように思っていたからだ。
彼女には彼女なりに色々思うことがあるんだろう。それから奈美は笑った。


「その分、あびるちゃんにはしっかりこだわりがあるから偉いよね」
夕日を背後に笑う彼女はとても綺麗だった。それからだろうか。あびるはいつも奈美を目で追うようになり、これが憧れになり、いつしか恋にまで昇華していった。
あびるは自分の気持ちに素直だった。潔く彼女への恋心を認めた。
だからこそ今の状況には複雑な気持ちを抱かざるを得なかった。
あびるは息をもらした。舌を使いあびるの胸を苛める奈美。こうなることを心の深いところで望んではいた。
奈美は先端を加え歯で軽く噛んだ。その度にあびるがもらす吐息に興奮する。自分の行為が彼女の愉悦に変わることが不思議だった。
いやらしい表情と頭を撫でてくれる優しさのギャップが奈美には心地よかった。奈美はあびるの太ももに潜むように手を伸ばした。拒まないあびるに調子をよくする。
あびるの背もたれになるように彼女の背後に座り直す。右手であびるの口に棲む舌べらと遊び、左手で下着の上から足の付け根を刺激した。下着越しに僅かに熱を感じた。


好きだった相手に愛されるこの状況にあびるは溶けかけていた。しかし頭の隅ではやりきれない自分がいた。
奈美は絶えずあびるをまさぐる。右手で胸を揉みしだく。ずれかかった下着から茂みが顔を見せていた。
奈美はそれを優しく撫でる。口からもれる息は次第にはっきりと声となっていく。
嬉しさの隅に巣食う影の正体にあびるはとうに気付いていた。この状況を作り出した可符香だった。
奈美は前に言った。初めは可符香ちゃんに相談したと。そう言われたあの時の嫉妬心をあびるは忘れはしない。
何を考えてか可符香ちゃんは私に奈美ちゃんを仕向けるように今の状況を作り出した。
奈美ちゃんは可符香ちゃんに言われたことなら何でもしちゃうの? 羞恥に燃えながらあびるの頭に感情の波がはびこる。
あびるは奈美を振り返った。目が合う二人。奈美は優しく笑いキスをする。

714 名前:不完全な蝶[sage] 投稿日:2009/06/12(金) 04:27:40 ID:WnETfcLJ
手順がおかしいよ。私が告白して、ドキドキしながら、家を一緒に帰りたかったよ。
奈美の左手は茂みを越えようとしていた。買い物に行って動物園に行きたかったよ。あびるの頬に涙が伝う。
その笑顔だって、優しさだって全部雰囲気作りのためなんでしょ?
絡み合う舌。されるがままのあびるの頭には蝶が浮かんだ。
サナギになった青虫が成長を急ぎ、完全になるまえに孵化をしてしまう。そんなことが実際にあるかはあびるは知らなかった。
孵化した蝶の羽はボロボロでまともに飛ぶことはなかった。そんな光景かあびるの頭をよぎっていた。
奈美の指があびるの中に入ってきた。
私たちこれじゃあ飛べないよ。あびるはそう思った。
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(智恵×可符香)秘密が育てる

くるくるとペンを指で回す。静謐な時間が過ぎる。奈美は体の不調を理由に保健室に来ていた。
確か今日は代理で智恵先生が管理をしていた筈だが姿がない。
奈美は勝手に保健室にあがりこみ、吊るされているカーテンに囲まれたベッドに横になっていた。
数十分寝たのち、眠気をなくした奈美はやることもなく、手持ちぶさたにポケットに入っていたペンで遊び始めた。
そもそも保健室に来る程の大事ではなかったから、退屈な授業をサボれたらそれで良かったのだ。
ベッドを囲むカーテンからは日差しが奈美をわずかに照らす。淡い光が暖かい。奈美はボーッと光に焦点を合わせていた。
「あっ」指で回していたペンが音を立て床を転がる。そのまま隣のベッドの下まで転がっていった。
ベッドの下を見つめ、少し考えたあと奈美は布団を自分から払いベッドを下りた。体をかがめ、ベッドの下を見る。奥の方でペンを見つける。
手を伸ばしただけでは届かない。奈美はいそいそと這いながらベッドの下に潜り込んだ。
ガラリと保健室の扉の開く音が奈美を驚かせる。
誰か来た。悪いことをしている訳でもないのに体が固まる。


「いいんですか?保健室使っても? 」
「いいのよ。今日は私が担当だから」智恵先生ともう一人聞き覚えのある声。二人は会話を続けた。
「ほら。向こうにソファがあるからおいで」
「あっ、はい」
足音が奈美に近付いてくる。ベッドの下からは二人の足だけが見えていた。その足は奈美を通り過ぎると、先のソファに位置ついた。
ここで初めて奈美は二人の顔が見えるようになった。顔を横に向けてうつ伏せていた奈美の瞳には智恵先生と同級の可符香が映っていた。
ソファに座り二人は向かい合うように体を寄せる。奈美にはそれが丸見えだった。
「智恵先生、誰か来たらどうするの? 」
「大丈夫よ。表に外出中の張り紙を張ったから」
どうやら二人は奈美には気付いていない。息を殺し気配を消す奈美。完全に出るタイミングを見失った。
どうしよう。今出て自分の状況を上手く説明出来る自信がないよ。
焦りながらも奈美は二人に目を離さないでいた。
あの二人は何をしているんだろう。
奈美は疑問に思った。自分が言うのもおかしいが今は授業中だ。何故二人は?
さらに可符香の様子がいつもと違うのに奈美は気付く。


目を輝かせ、智恵先生を憧憬するように見つめている。先生も先生でそれを受け止めるように優しく微笑む。
二人はまるで恋人のようだ。
奈美は思った。
智恵先生が可符香の頭をなでる。撫でては耳をなぞる。髪を持ち上げてはそっと手中の髪に顔を埋める。
智恵先生は母親というよりは小さな子供に悪事を教える悪魔のように可符香を可愛がる。
可符香は照れながらも全てを任せていた。膝に手を揃え、顔を真っ赤にしてうつ向いている。
耳元に唇を寄せて智恵先生が何かを呟く。奈美には何を言っているかは聞こえなかったが、可符香の顔がボーッと力の抜けるようにトロンとしたのが見えた。
私、とんでもないことに遭遇してる!? 普通じゃないよあの二人!
奈美の手が汗ばむ。握られたペンに力が入る。狭いベッドの下は蒸し暑く、奈美の体も汗ばみ始めた。
額を流れる一筋の汗。それを拭おうと奈美はペンを握り締めた右手を静か上げる。同じ姿勢でいたせいで右手が痺れペンを落としてしまった。
一瞬だけ小さな音が静かな保健室を支配する。


ヤバい。奈美の肌が粟立つ。奈美は恐る恐る二人を見た。
可符香は智恵先生に抱えられるように胸に顔をうずめていた。智恵先生も可符香のうなじ辺りを見ている。
奈美は安心して一息ついた。緊張の糸がほどけたと同時に嫌な予感が体をよぎる。
智恵先生と目が合う。可符香の肩越しにこっちを見ている。驚いた様子もなくただ視線をこっちに合わせていた。
動けない奈美。見つめ返すしか術がない。体から汗が吹き出した。奈美の目が智恵先生の口が開くのをとらえた。
もうダメだ。バレた。甲高いベルの音が三人を包む。可符香がハッと肩を上下させた。
「チャイムだ。そろそろ行かなきゃ」
「そうね、さすがに二時限続けて休むのはイケないわ」
惜しむように立ち上がる可符香を智恵先生は聖母のような笑顔で見送る。
またね。智恵先生は可符香の耳元で言うと、頬に口づけした。
「それじゃあ、失礼しました」可符香はクラスで見せる冷淡な姿に戻り教室を後にした。
「さて」手の甲を腰の横にあてたままの智恵先生がにやりと笑った。
「出てきなさい」


奈美はベッドから出ると、スカートを手で払い、申し訳なさそうに愛想笑いで返した。
「これには訳があってですね… 」
「覗きなんて悪趣味ね」智恵先生の無垢な笑顔が余計に奈美の恐怖心を揺らす。
「じ、授業行かなくちゃ」智恵先生を振り切って奈美は保健室を出た。
扉の外では可符香が待っていた。手を後ろで組んで立つ姿からはとても同い年とは思えない程の落ち着きが垣間見れる。
「奈美ちゃん」可符香の笑顔の意味が読み取れずに奈美はわなないた。
「なに? 」
「人には知られたくない秘密が一つくらいはあるんだよ」可符香はそう言うとさらに奈美に耳打ちを加えた。
「これは私と奈美ちゃんとの二人の秘密だよ」気付くと奈美は可符香の後ろ姿を見ていた。授業の始まるチャイムが奈美の意識を戻した。
「ほら、早くクラスに戻りなさい」智恵先生は保健室の扉から外出中の張り紙を剥がすと中に入っていった。
奈美は教室へ急いで向かった。動悸が乱れる。耳には可符香の暖かい吐息が残っていた。二人の秘密という言葉が頭の中で反芻する。
奈美はなんとなくこれから退屈しなくて済みそうだと赤ら顔で思った。

(可符香×奈美)

私は周りと違う。なんというかクラスメイトは子供っぽい。
あぁ、下らない話で今日も盛り上がっちゃって。私は将来大成するのに、のんきなもんだ。
教室、一人でお昼ご飯を食べる。なんでご飯ですら皆つるんで食べるのか、私には理解出来ない。
それどころかトイレにすら一人で行けないなんて、精神が幼い。
「奈美ちゃん。良かったら一緒に食べない?」
私は不意に話し掛けられ、肩を跳ねさせた。
机を固め、グループごとに昼休みを過ごしている、その中の、私の背後で昼食をしていた子達の一人が私を誘ってきた。
あれは風浦さんだ。
「わ、私はいいよ、ひ、一人で」ものぐさに言う。
偽善者なんでしょ?あぁ、下らない。
私は額に少しの汗を浮かべ箸を持ち直した。
ずずっ、ずずっと椅子を引きずる音が騒がしい教室に混ざりながら近付いてくる。
箸をくわえた風浦さんが右手に弁当を持ち左手で椅子を引きずり私の机の向かいにそのまま座った。
「いいから、いいから」右手をおいでおいでしながら風浦さんが言った。
身体中に汗が滲む。な、何を話せば……変なこと言って浮いたら嫌だ。
何も浮かばない。
「おかず交換しようよ」風浦さんが私のお弁当を覗く。

「べ、別にいいけど」
「じゃあ、私はこれ」そう言って小さな唐揚げを箸でつまんだ。
そのまま口に運び頬張る。
「おいしい」にっこりと笑う。私も笑い返す。うまく笑えてるだろうか。
「はい、お返し」自分のお弁当からだし巻きをつまむと、私に突き出してくる。
どうしたらいいか分からず、つい口を開けてしまった。
「え?私が食べさせるの?」あれ?勘違いした?再び身体中から汗が浮かぶ。
「しょうがないなあ」風浦さんは私の顎を手で支えると、あーんと言ってだし巻きを食べさせてくれた。
妙にその言い方が色っぽい。
「おいしい?」顔を真っ赤にして私はおいしいと答えた。
昼休みが終わった。調子が狂う。やっぱり私は一人の方が合っている。
でも何故か退屈な午後の授業が苦痛ではなくなった。
明日も誘ってくれるかな。そんなことを妄想したら、自然と鼻歌でも奏でたくなっていた。

今日はまあまあ楽しい一日だったかな。
にやにやしながら帰り支度を始める。
ま、退屈なのには変わりないんだけどね。
鞄に教科書をつめ終え教室を出る。
靴箱には風浦さんがいた。
「あっ、奈美ちゃん。待ってたよ」
風浦さんは続けて一緒に帰ろうよと言った。


「え、あ、うん」
口調がしぼんていきながらも私は答える。
あくまでもしかめっ面を装う。
胸がドキドキする。風浦さんに聞こえてしまうんじゃないのか。
震えた手で靴を履く。
「教室で誘ったら人がたくさんいるから奈美ちゃん照れると思って」
正門を出たところで風浦さんは述べた。
確かに教室で言われたら粗野に別れを告げたかも。
へぇ、私のこと分かってるじゃん。
「ねぇ、良かったら友達になろ」歩きながら軽い口調で風浦さんは言った。
緊張が頭の先から爪先までを瞬時に走る。
返事につまる。
「だめ?」上目遣いで私を見る風浦さん。
「いいよ、と、友達ね」声が裏返った。あぁ、早く家に帰りたい。
「じゃあ、メルアド交換ね」私の携帯に送られた風浦さんのアドレス。高校に入って初めての交換。
「私はここでお別れ」
住宅に囲まれた夕景。風浦さんは私とは違う逆の方向に向かおうとしていた。
そもそも風浦さんは家の方角真逆だったような。
「風浦さん、なんで私のこと」
言い終える前に彼女は歩み始めていた。
小さくなった彼女が手を振る。
私も振り返す。ばいばい可符香ちゃん。
明日も学校に行こうかな。

(晴美+千里)つぼみ

湯船の中で小さくため息を吐く。
天井を見上げて、浴槽にもたれかかりながら私は目を閉じる。
しばらくすると、不意に水音と共に水面が揺れた。
目を開けて、隣を見てみると千里の姿が目に映った。

「どうしたの?」
千里が首をかしげて尋ねた。
別に何を話すでもなく、千里をじーっと見ていた私を不思議に思ったんだろう。
「ん……いいなあって、思って」
「何が?」
首をかしげながら、千里は私の視線の向かう先を追い、すぐに私が何を言ってるのか気づいたようだ。
私が見つめているのは、千里の体の一部分、最近膨らみ始めたその胸だった。

「あんまり見ないでよ。ちょっと……恥ずかしいんだから」
そう言いながら、千里が頬を赤らめる。
そりゃあもちろん、千里の胸は大人の人と比べるとずっと小さい。
でも、ちゃんと柔らかな膨らみを持っているそれは、紛れもなく女の子のおっぱいだった。
対して、私の胸はまったくの平ら……それこそ男の子と何が違うのか。
ちょっと自分が情けなく、同時にちょっと千里が大人に見えた。




「ね、触っていい?」
「へ?……ええー……っと」
「ちょっとだけ」
「……ちょっと、よ?」
千里はお風呂の中で正座すると、手を膝の上に置いてきちんと姿勢を整えた。
そんな千里の様子が可愛くて、心臓がドキドキしてた……きっと千里もそう。

千里の胸に顔を近づけて、すぐ傍で見てみる。
「きれい……可愛い、かな?」
「……ありがと」
なだらかな丘と、ピンク色の小さな突起。
ずっと近くにあった千里の体の変化を感じて、なんだか恥ずかしくなる。
もちろん、千里は私以上に恥ずかしいんだろう、その顔が真っ赤になっていた。

手を伸ばして、千里の膨らみに触れてみる、むにゅっと柔らかく形を変えて、私の指が胸に沈む。
それと同時に、千里が辛そうな声を上げた。
「っ…ごめん、晴美」
そう言うと、千里は身を引いた。
「……ちょっと、最近敏感になっちゃって」
「あ……うん」
お互いなんだか恥ずかしくなってしまって、ちょっとの間沈黙が続いた。


「……やらかかった」
なんとなく、独り言をこぼした。
さっきの千里の胸の感触の残る指を、自分の胸に当ててみる。
そこにあるのは、薄い肉と骨の感触。
(これは……おっぱいじゃないなぁ)

はあ、とため息を吐いて千里を、千里の胸を見る。
「私も、千里みたいに大きくなるかなあ……」
「大丈夫よ。うん、晴美の胸だってそのうち大きくなるわよ」
あんまり私が羨ましがるもんだからか、千里はちょっと誇らしげに胸を張って言った。



「あ、そーだ」
何か思いついた様子で、千里は私に近づくとその手を私の胸に当てた。
「揉むと大きくなるらしいわよ」
「聞いたことあるけど…ほんとに?」
「試してみればいいじゃない」
そう言うと、千里は手の平で私の胸をやさしくさすった。


「どう?」
「わかんない……けど」
私の胸を揉んでみる千里。
その効果は、と言われてもそんなのわかるわけない。
「ドキドキして……なんか体が熱い、かな」
言えることなんてそれくらいだった。
「効いてるんじゃない?よし!」
なんて言いながら、千里がちょっと指の動きを激しくする。

「っ……ん」
「ここ?」
千里が、私が一際大きく反応した部分を探り当て、指を伸ばした。
胸の先端の乳首をつまみ、引っ張り、刺激する。
「あっ!?あん、やだ……やぁ」
少し前かがみになった私を千里は背後から抱きしめ、首筋に何度もキスをする。
「晴美……かわいい」
耳元で甘い声を囁きながら、千里は私の太股に指を這わせる。
指は私の脚を撫でながら、少しずつ体の中心へと向かい、私の――



ガン、と鈍い音と白い光。
何か、硬い感触の上で私は寝ていた。
「……い…たたたた…」
鈍痛のする頭を撫でながら立ち上がり、辺りを見回してみる。
電車の中…そして、目の前にいるのは…大きいけど、千里?

「何て寝言を……」
ぷるぷると拳を震わせながら、夕日のせいか少し赤い顔で千里が言った。
「寝言……私、夢見てたんだ」
私が見ていたのは、いつかの私達の夢。
一部、今の私に合わせてくれたのか変更された部分もあったけど……

(あんな風に千里にいじめられるのもいいなぁ……今度頼んでみようかな)
「……何考えてるのよ……ほら、さっさと立ちなさい」
そう言いながら千里が伸ばした手を取って、立ち上がる。
むくれる千里に、ごめんごめんと謝って隣に座った。
ちらと横目で千里の胸を見る。
小さな胸、夢で見たころの千里の胸とさほど変わらない。
対して私の胸は大きく成長し、胸の大小に関しては、すっかり逆転した形になっていた。

「んー……」
「……どうしたのよ」
「うーん……えっとね」
千里に体をすり寄せながら尋ねてみる。
「今日、行ってもいい?」
「……っと……大丈夫だけど」
にこりと笑顔を返すと、千里は少し照れた様子で視線を逸らした。

(まだ間に合うよ、たぶん)
心中で一人呟いてみる。
それに、試してみればいい、なんて言ったのは千里の方なんだしね。
千里に見えないように、流れていく景色を眺めながら小さく笑う。

今夜は楽しくなりそうだ。

(可符香×あびる)窓際と遊ぶ

二人は夕景に見守られながら窓際に立っていた。あびるの影になるように可符香が後ろに並んでいる。
「ほら、夕焼けが青いよ」あびるは可符香には応えずにうつむいたまま、黙っている。
「夕焼けが青いとね、次の日に強風が吹くんだよ」可符香はあびるの左肩に顎を乗せた。
「強風の原因となる低気圧が近付くと、塵とかが舞ってね、それを反射するかららしいよ」
えへへ。可符香は笑って自慢気に言った。もじもじとあびるが膝を揺らす。
「可符香ちゃん、まだやるの?」うつむいたままのあびるが聞いた。
「何をかな?」語尾を伸ばしながらニヤニヤとする可符香は体重をわずかにあびるに預けた。
窓の外からは放課後のチャイムに見送られ家路を急ぐ生徒達が覗ける。あびるに向かって手を振る生徒もいた。
超然とした態度であびるも手を振り返す。
その間、可符香はあびるのすぐ後ろで、彼女のスカートの端をつまみゆらゆらと揺らしていた。
その度にあびるの太ももがはだける。ヘソまで上げられたあびるのスカートから下着が露出する。
「恥ずかしいから」真っ赤になった顔を隠すように下を向いたあびるが冷静に言う。


お尻に回された手が怪しく動く。腰までまくし上げたスカートをはためかす。奈美が外を歩いているのがあびるの目に入った。
可符香もそれに気付きあびるに耳打ちをする。
「奈美ちゃん。いま帰るところなの?」あびるは可符香に言われたことを追随した。
可符香はあびるのスカートを全てつまみ上げた。そこの部分だけ重力が逆になったように天井に垂れる。
「うん、そうだよ。あびるちゃんはまだ帰らないの?」奈美は仰ぎながら大きな声で手を振っている。奈美は可符香には気付かない。
次いで耳打ちをする可符香。
可符香が耳打ちをする度にあびるが小さく小さく息を洩らし、肩を跳ねさせる。
「まだね。ちょっと遊んでるの」声が震えているのに奈美は気付いただろうか。首を傾げ奈美はあびるに別れを告げた。
可符香は上機嫌に鼻唄を交え、あびるのうなじを見つめる。
「もう帰ろうよ」あびるが呟いた。暮れかけた夕日が眩しい。二人の膝の裏と膝が重なる。


可符香はこれを遊びと呼んでいる。
窓際に立ちスカートをめくる。外からは分からない。あびるの恥ずかしそうな顔を見るのが何よりも楽しい。
付き合い始めて数日で提案してきた可符香に断りきれなかったあびる。
彼女の笑顔で願い事をされると何でも言うことを聞きたくなってしまうの。あびるはそう思っていた。
「もう少しだけ続けようよ」うん、と小さく呟くあびる。
下着を見てはあびるを交互に見る。あびるはうぅと唸りながら受諾した。
徐々に上がる可符香の手。スカートから腰へ。腰から胸へ。胸から首へ。
外の電灯がぶぅんと音を立てた。パチパチと点滅を繰り返す。
この遊びはいつ終わるのだろうか。あびるは考えた。首に少しの握力が加わる。
可符香ちゃんに見初めた私を受け入れてくれた。あびるは次第に息苦しくなる。
もしかして彼女にとったら全てが遊びなのかも。うなじにキスをされたあびるは遠のく意識に可符香の可愛らしい笑い声を聞いた。

(あびる×カエレ)


カエレは座った。ベッドの白いスーツにシワがよる。
壁に垂れる尻尾が異様なこの部屋にあびると二人きりになる。静謐な空間に包まれ、あびるは笑った。
綺麗な冷たい表情が温度を取り戻す。
「よく来たね」あびるの優しい声にカエレの力が抜けていく。
見知らぬ部屋が作る居心地の悪さはもう消えていた。あびるがカエレの隣に肩を並べる。
この子は何がこんなに楽しいのだろうか。あびると目が合う度にカエレはそう思う。
「なんか言ってよ」手を握り、振りながらカエレに甘えてくる。
カエレはただ顔を赤くするしかない。
たった一回。ふとした気まぐれで彼女に尻尾のことについて聞いただけ。
興味なんか無かったけど、話を繋ぐためにした話題だった。
それをきっかけに彼女とこんな関係にまで発展してしまったのは、
多少なりともカエレにもあびるに惹かれるところがあったのかもしれない。
家に招待される。初めての経験。何かを少し期待する自分がカエレの中にいた。
これはわたし?それとも何番目かの人格?
ニヤニヤしながらカエレを見るあびる。
「黙って何考えてるの?」
「なんでもないわよ」

後ろに両手をついて楽な姿勢に座り直すカエレ。立ち上がりあびるはカエレの太ももに乗った。向かい合う二人。
「なによ」
精一杯ドスを効かせたつもりで出した声も恥ずかしさから裏返ってしまう。あびるはカエレに答えずに、彼女の肩に両手を添える。
「だからなによ」
汗ばむ体。手にも汗がにじみ出す。カエレは緊張する。あびるの顔が近い。
反射的にカエレは目をつぶった。あびるの静かな鼻息が耳に届く距離になる。
いささか不器用ではあったがあびるは唇を押し付けてきた。カエレの両手がギュッとシーツを掴む。
目を開けると満足そうなあびるの表情があった。
恍惚そうな顔をしてため息を吐くあびる。そのままカエレの胸に抱きついた。
端から見ると母親に甘える子供のようだ。カエレは自然と頭を撫で始めた。
包帯を避けるように優しく。あびるは小さくお礼を言った。
少し気まずいなあ。カエレはあびるのつむじを見ながら思う。
照れを隠すつもりでなんとなく自分の中を不満で埋める。そんな子供のようなやり方。

あびるが顔をあげカエレを見上げる。何も言わずに笑う。そしてまた顔をうずめた。
何かしら。カエレは考えた。
胸に何かが当たる。ひい、とあげた悲鳴は小さい。
可愛い舌べらがカエレの胸を這う。
上目遣いでカエレを見つめながら、まるで自分の行為を見せ付けるようにするあびる。
ワイシャツがヨダレで湿り透けていく。白いワイシャツから赤い下着が浮かぶ。
「嫌じゃないの?」
「嫌よ」
「じゃあ何でとめないの?」
もっともなことを聞かれボロが出た。嘘がバレる。正直嫌じゃない。
強がりを隠す為に何かを言わないといけないと思い頭を動かす。
「私はカエレじゃないわ」
「え?」
「わ、私は嫌だけど今の人格は私じゃないから」
苦しいのが自分でも分かる。カラスが外で鳴いている。日も暮れかかっている。
あびるは笑いを堪えた。
「じゃ、じゃああなたは誰なの?」
笑いを抑えながらあびるは聞いた。
「カエル」
カエレはぶっきらぼうに言った。声をあげあびるは笑い出した。腹を押さえて笑うあびるに悔しさが込み上げてくる。
「帰るのよ!バカ!」
カエレは部屋を出た。なかなか素直にはなれない。都合よく人格は変わってくれない。
明日謝るときに誰か代わりしてくれないかな。帰り道、涙目になりながらカエレは思った。

(智恵×霧)宿直室 昼のひと時

小森と智恵が互いの思いを確認し、肌を重ね合ったあの日。
2日後に再び智恵が小森の元を訪れる約束をして別れ、その日がやってきた。
小森は朝ご飯の食器を洗い終え、部屋の掃除をしながら、今か今かと智恵の訪問を心待ちにしていた。

太陽がそろそろ空の天辺に登ろうとする、午前の時間帯。部屋の掃除も一段落した頃。
宿直室のドアが軽快にノックされる。
「小森さん、いるかしら?」
約束通り、智恵が宿直室を訪れてきたのだ。
「智恵先生。いらっしゃい」
小森は穏やかながらも満面の笑みで智恵を出迎えた。
その様子に智恵も心底から笑みをこぼす。


時間は午後に移り変わる少し前。
この時間に智恵が顔を出したのにはわけがある。
お茶を啜っておしゃべりをし、一段落して智恵が話を持ちかける。
「もうお昼の時間ね」
「そうだね」
「小森さん、一昨日の話…覚えてる?」
「え……」

一昨日のこと……
小森はそう聞いて、二人で肌を重ねた時のことを思い浮かべてしまう。
思いを込めた言葉、何度も交わしたキス、肌の感触、温もり……
瞬く間に小森の顔が紅く染まっていく。
しかしそんな小森とは裏腹に、智恵はごく普通に話を続ける。
「ほら、できれば小森さんに料理を教えてほしいって話よ」
「えっ?あっ…う、うん!」
ごく普通の話題を持ちかけられ、慌てて頭の中のことを振り払う小森。
(そうだよね…私、一人で何考えてるんだろ……)
自分だけ話のベクトルがいやらしい方向に向いてしまったことが恥ずかしくなり、ほんのり頬を染めたまま俯いた。
「よかったら、これから一緒に作らない?台所借りるけど、小森さんに色々教えてもらいたいし…」
そう、一昨日の帰り際、智恵が話していたこと。
何気ない会話であったが、小森はそのことをしっかり憶えていたし、楽しみにもしていた。
でも昨日は智恵に外せない用事があり、その翌日では疲れているだろうと思って、今日は自分が作ってあげようと思っていた。
しかし智恵はその何気ない話をしっかりと憶えていて、自分と同様楽しみに待っていてくれたのだ。
小森にはそれがとてもうれしかった。
「いいよ、一緒に作ろ」
小森はいつものような明るい笑顔で答えた。


今日の献立は、料理の基本である味噌汁と、比較的簡単な煮物にしよう、ということになった。
台所にて、二人は並んで野菜を切り始める。
「大根の皮剥きはこうやって包丁じゃなくて大根を動かしてね…」
智恵に対して大根の皮の剥き方を教える小森。
普段は智恵に甘え、支えてもらっている分のお返しができると思ってか、その口調は嬉々としている。
もしくは「立場が逆転して嬉しい」という無邪気な理由か。
「小森さん、流石に慣れてるわね」
「うん、毎日作ってるもん」
望や交のために毎日料理をしているだけあり、野菜を切るスピードやその手つきも慣れたものがある。
だが、その時小森の頭にあの言葉がよぎる。

―――これだけしっかりしていれば、糸色先生のことも安心ね
一昨日智恵が何気なく発した一言。
これによって、自分の中の望への思いと智恵への思いが交差し、自分がわからなくなったのだ。
でも、智恵は小森のその部分まで察して優しく抱きしめてくれた。
小森と同じように智恵自身の気持ちを打ち明けてくれた。その温もりは今でもしっかり残っている。
だが、そのことと同時に二人が一線を越えてしまったことも自然と湧き上がってしまう。
「小森さん?」
「あっ、ううん!なんでもないの!」
(って、だめだめ!また何を考えてるんだろう、私……)
はっと我に返り、気持ちを料理に専念させようと慌ただしく包丁を動かす小森。
「あ、そんなに慌てなくても―――」
智恵は小森の慌てた様子に注意を促そうとしたが、一足遅かった。 
「痛ッ…!」
小森の指先に、ピリッとした鋭利な刺激が走る。
すぐにその部分に目をやると、左手の一指し指に細い赤線が切り込まれていた。
無論、うっかり包丁で切ってしまった跡だ。
「痛ぁー…やっちゃったぁ……」
「あらあら、だから言ったじゃない。ちょっと見せて」
智恵はすぐに小森の人差し指を手に取り、傷口に目を向ける。
「うん、そんなに深くは切ってない様ね」
指先をじっと見つめてそう言うと、その智恵の唇が近づいてゆき……
「あ………」
指先がそっと口に含まれた。


しっとりとした唇に挟まれ、温かい口内で傷口の血が舐めとられる。
(う…うわぁ………)
小森は固まり、その光景と感触を半ば放心気味に見つめる。
「ん…これでいいわね」
指先から唇が離される。
「先生……」
「バンドエイド持ってくるわね」
智恵はそう言って台所を離れようとする。
「あの……その……」
「なあに?傷が痛むかしら?」
「ううん……その、ごめんね…?私から教えてあげるはずだったのに、結局世話焼かせちゃって……」
「ふふ、いいのよ。気にしないで」
智恵は優しく微笑み、台所を後にする。

今、台所には小森一人しかいない。
指先には唇の温もりと唾液の湿りが残ったまま。
(びっくりしたぁ………まだすごくドキドキしてる……)
小森はしばらくその指先をうっとりと見つめ、智恵がすぐに戻ってこなさそうなのを確認する。
(今なら……ちょっとだけ………)
そして、智恵と同じように指先を口に含んだ。
それは言うまでもなく間接キス。
直に唇を触れ合せたことがあるとはいえ、それとはまた別の背徳的な興奮が湧き起こる。
一瞬だけで済ませばいいものを、小森はすぐに口を離さず、ちゅうちゅうと二次的な智恵の唇を堪能する。
(智恵先生………)
「おまたせ、小森さん。ちょっとバンドエイド探すのに時間かかっちゃって…」
「え、あっ!う、うん!いいよ…ありがとう」
うっとりと夢中になっていたところに不意に声をかけられ、小森は驚いて咄嗟に口から指を離す。
「やっぱり傷が痛むかしら?」
「いや、その、まだ血が止まってなかったから……」
「そう。見せて」
智恵は小森の指を手に取り、二人の唾液が滲んだ部分をバンドエイドで包んだ。
「もう大丈夫ね。じゃあ続けましょ。まだ色々と教えてもらわなきゃ」
「うん…」
(気付かれてない……よね?)
小森は普段通りに振舞おうと返事をし、二人の小さな料理教室は続いた


あれからは特にトラブルもなく、小森が一緒だったので料理初心者の智恵も大きな失敗はしなかった。
ご飯、味噌汁、風呂吹き大根、肉じゃがとその日の昼食のメニューが食卓に並ぶ。
「わあ、おいしそう。でも小森さん、いつも大変なのね」
不慣れな料理に本格的に向き合ったのは、智恵にとって初めてだったかも知れない。
大きな失敗はしなかったとは言え、要領が掴めず苦労した点は少なくなかった。
「ごめんねぇ、私ったらちょっと足引っ張っちゃったわね」
「いいのいいの。だから教えてあげたんだから。それに二人で一緒に作れて楽しかったし」
小森のその愛らしい微笑みには、二人で同じ時間を過ごした幸せが溢れ出ていた。
と同時に、先ほどの出来事と今までのことに対するもやもやが見え隠れしていたが。
「じゃあ、食べよっか。お腹空いちゃった」
小森はそのもやもやをなるべく悟られないよう、いそいそと食卓の前に座る。
しかし、智恵は自分の料理の前には座ろうとせず、「その前に…」と小森の横に腰を掛ける。
「え…先生……?」
「ちょっとだけ、お仕置きしなきゃね…?」
智恵の優しい微笑みが妖艶なものへと変わる。
「な、何のこと―――んむっ!?」
そして、小森が“お仕置き”の意味を理解する前に、唇が直に塞がれた。
指を切った後、我を忘れて間接的に奪った智恵の唇で。
「んっ…!ぷあっ……!な…なに…?」
「だって、小森さん料理中につまみ食いしてたから」
「つ、つまみ食いって……?」
状況が飲み込めない小森に対して、智恵はバンドエイドを巻いた小森の人差し指を自分の唇の前に持ってくる。
そして、その指に自分の唇をなぞらせながら、決定的な一言を言った。
「私の唇を、つまみ食いしてたでしょ?」
「……!」
そう。あの時小森が丹念に指を吸っていたのは、応急処置のためではなく欲情していたからだと見透かされていたのだ。


「やっぱり、気付いてた……?」
恥ずかしさと気まずさの入り混じった赤い顔で、おずおずと尋ねてみる小森。
「ええ。ほぼ毎日一緒にいるんだもの、あなたの表情を見ればわかるわ」
(どうしよう、先生に気付かれてたんだ……どうしよう…嫌われちゃうのかなあ……)
ますます複雑に思いつめる小森だが、智恵はそんな彼女の頬を優しく持ち上げる。
「だから、何かあったら迷わず私に言いなさい……ちゅっ」
「あ…」
唇に優しくキスをされる。
「落ち込んだ時も、いやらしいことを考えちゃった時も……私が受け止めてあげる。
 私たちは、お互いに一人で抱え込むような関係じゃないはずよ?」
「先生………ふふ、そうだったね……」

小森は思い出した。たった二日前、二人で得たものを。
その日初めて打ち明けられた二人の思い。
それらは決して一時の気の迷いでも一方通行でもなくて、お互いに支え合える確かなもので。
肌を重ね合わせたのも、二人の思いがちゃんと通っていたからこそ。
「私たち、こんなに仲良くなったんだもんね……」
小森は今までの暖かい出来事を反芻するように瞼を閉じる。
「智恵先生。大好きだよ」
そして、後は何も言わずにその唇を大好きな人へ委ねた。
「小森さん……私もよ」
やがて、心から望んだ柔らかな感触が小森の唇を覆う。二人の唇が重ねられた。
「ちゅ…ん…む…小森さん………」
「んんっ………せんせぇ………ん……ふ…ぅ…」
二人の思いに乗せられ、深く濃厚に絡められる唇と舌。
その熱いキスは長い時間に渡って続けられた。

二人はお互いの気持ちを再確認した後、少し遅い昼食の時間を迎えた。
料理は少し冷めてしまったが、小森にとって今までで一番おいしい昼食だった。

日が暮れてから二人が心身共に熱い抱擁を交わしたのは、また別のお話。

(まとい×霧)

私は嫉妬している。




目の前では、幸せそうな顔をして毛布を被っている彼女がいる。
さっきまでさんざん同じ色形の毛布に包まされて、はぁはぁしていたにも関わらず。



可愛いいな。

だけどそう思ったことは、胸の内にしまい込んでおく。
なんだか、素直にそれを受け入れるのが怖いから。



幸せそうな彼女の傍らにあるのは、「高級タオルケット」の印が入った化粧箱。
そういえば先生がお詫びの品として、彼女に贈ったとか言ってたっけ。
彼女はその贈りものに納得できなかったようだけど。




改めて私は嫉妬をする。



今回の騒動は、先生の呼びかけから始まったことだ。
相変わらず、彼女には甘い先生で、
クラスの子達も子達で、それに従って、全員で毛布の捜索に乗り出し始めた。


少しむかっとした。
あの子達は、彼女と殆ど付き合いも無いのに、誰一人嫌な顔もしなかった。
私なんか、どうしようか、探そうか否かとウジウジ悩みこんでいたというのに。



結局、私もそれを手伝った。
どぶの中に落ちて汚れてしまってはいないか、木や何かに引っかかって破れてやいないか、色々心配をしながら探した。
汚水に腕を汚して、樹皮で脚を傷付け、そこまでする自分に、何処か淡い期待が持てて。



結局、毛布探しは加賀さんの発見で事無きを得た。
お手柄の加賀さんは先生に沢山お礼を言われて、顔を紅くしていた。

そして彼女からも、眩しげな視線を浴びながら、
―ありがとう、愛ちゃん―
とお礼の言葉をもらっていた。
あの時の加賀さんの嬉しそうなはにかみ顔が、ずっと頭から離れずにいる。




ずるい。




「先生から貰ったんだって?羨ましいわね」


自分でもびっくりするような冷たい声で、私は目の前の彼女にそう言った。
そして彼女は初めて私に気付いた様子で、穏やかな表情を一変させ、目をまん丸くした。
その時、私は部屋の物陰から覗くような体勢から、ずいっと身を乗り出して接近したのだ。彼女が驚くのも無理はない。
思わず取ってしまったこの行動に、内心ではなんだか後悔の念が隠せないでいる。
でも私の顔は鉄面皮みたく固まっていて、睨むように彼女を見つめているだけだ。


「そうだよ」
彼女も直に落ち着いた面持ちになり、短く言い切る。

「でもあなた、そっちじゃないと駄目なんでしょ?」
私は、彼女が羽織る毛布に目配り、続いてこう言った。

「だったら、貰っちゃってもイイわよね?」
「!」


彼女の表情が強張った。と同時に、私は化粧箱に手を掛けた。





私は三度嫉妬をする。






―不況に喘ぐ世界中から 小森さんが狙われることになるのです!―

もっともらしく言ってみた、私の言葉。
実際、彼女に近づく怪しい影を一番に見つけたのは私だ。
私が一番、彼女のことを見つめていた。
私の誇り。


だけど。
本当に言いたいことは言えなくて。
恥ずかしくて、
本当は“ああ”言いたかったのに。



そんな誇りなんて砂のお城みたいなもので。



追い打ちをかけるように、
木津さんは言ったのだ。


―お国のために、健気に包まれている霧ちゃんを、守らなければ!!―




砂はあっけなく崩壊する。




―“    ”― と。




ずるい。





私のほうがずっと一緒にいるのに!ずっと近くにいるのに!
馴れ馴れしく名前で呼んでんじゃないわよ!
だいたい、あんたには藤吉さんがいるでしょ!
あの娘とよろしくやってなさいよ。霧ちゃんに手を出させない!


加賀さんだってそうだ!
前から三珠さんをその気にさせてたくせに、あんな嬉しそうにして!
大人しそうな顔をして、なんて娘!淫乱!不潔!


他のみんなだって!
あんなに数はいらない!
守るのは私一人で十分だ!






ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい






「…泣かないでよ」

そう言われて、私は涙を流していることに気付いた。
さっきまでの凍った皮膚感はない。
目元も口元も、きっと凄まじい位に歪みきっているのだろう。
それくらい、私の視界はぐちゃぐちゃになっている。


結局、私の手は彼女の手に阻まれてた。
それを突き破ろうとする気も、力も無かった。
そしてその場にへたれこんで、ただ泣くことしかできなかった。



―結局、何がしたかったんだろう?―



好きな人が変わるなんて、散々経験してきたことなのに。
今回だって、いつもと同じように気持ちを伝えればいいだけのことなのに。

滲んだ視界に、あの格子模様の毛布が映える。

あれが欲しかっただけだ。彼女の一身であるあれが。
だけど手に入らないのは分かっている。

だから、もう一つの、先生からのお詫びの品。
彼女が気に入らないのであれば、私がそれを引き入れてあげられる。

彼女への思いは、私一人で十分。それ以上は―――いらない。
そう思った筈なのに。



―私は、誰に嫉妬していたんだろう?


加賀さんに、木津さんに、いっぱいのクラスメイトに


                       先生に―





「あの毛布は、あげられない」
彼女がつぶやく。
「あれは、先生から貰った、大切な贈り物だから」
確かにその通りだ。大切な人から貰ったものを、そう簡単にどうこうできる筈なんてないのに。


情けないくらい最低な私。
八つ当たりして、喚き散らして、本当に情けない。





それなのに、

「だから」

彼女は、とても優しい声色と共に、
こんな最低な私を、

「ここで我慢して」

自身を包み込むそれで、一緒に包み込んでくれた。








そして私は口にした。
あの時言えなかった言葉に、もう一つ添えて。




―愛してるわ、霧ちゃん―





~LovEnvy My Sweet~

小ネタ

588 名前:名無しさん@ローカルルール変更議論中[sage] 投稿日:2009/05/05(火) 01:37:26 ID:XZ0UmLaW
千里は絶対自分からキスとかねだりそうにないよね。
何かむらむらしても、晴美に擦り寄っても何にも出来なさそう。

「千里」
「な、なに」
「何でそんな顔が近いの」
「・・・・・い、いいじゃない、私の勝手でしょ!」
「そう?」
「そうよ!」
「ふーん」
(何で気づかないのよ!晴美のバカ!鈍感!)

うん、こんな妄想しかできないんだ。

(あびる×奈美)恋する

いつもは辛辣な言葉しか向けてこないのに、こういうときだけ度が過ぎるくらいに優しいから参ってしまう。
ついばむキスを飽きるほどされながらベッドに倒され、キスはまだ続く。飽きないのだろうかと思いつつ、やめないでほしい自分もいるから笑ってしまう。
閉められたカーテンにオレンジ色の光がぼんやりと透けている。乾かしたばかりのシャンプーの良い香りが鼻をかすめた。

『すき』
あびるちゃんが私のノートの端にそう書いたのは、勉強を教えてもらっていた放課後だった。勉強というのは口実でただ一緒にいたかったのだけれど。
『わたしも』
少し字が震えてしまった。
あのとき聞こえた安堵の吐息も、まだ人がいたのに塞がれた唇の感触も一ヶ月も前のことなのに鮮明に覚えている。

(あれを誰にも見られなかったというのがなんというか、あびるちゃんらしい)
唇、耳、首筋、鎖骨。丁寧に触れられてなめられてその度に息が漏れる。
「ふっ…んん……」
「痛い?」
無言で首を横に振る。気持ちよさでちゃんと声が出せない。
太ももに手が伸びてきて、思わず固くなる。
「大丈夫だよ」
「…うん」
普段見せない笑顔で言われたら従うしかない。



割れ目に届いた指はいつも私を的確に溺れさせる。
でも今回は少し違った。何度も何度も割れ目をなぞるだけ。
すでにシーツにシミが出来るくらい感じているであろうことが、自分でもわかるくらいなのに。
「あびるちゃん…」
「なぁに?」
わざとだ。さっきの綺麗な笑みがいたずらっ子の顔に変わっていた。
それでも綺麗なことに変わりはないのだけれど。
「どうして欲しい?」
言いながらもなぞる行為はやめない。汗ばんだ私の前髪をかきあげ、じっと見つめてくる。
いつもあびるちゃんは私の先を行く。仕様がないのかもしれない。
でも、私だって好き過ぎるくらいに好きなのだ。
突発的に近づけられた顔を両手で固定して、自分から深いキスをする。
相手にとって予想外の行為だったことは一瞬止まった手の動きでわかる。
「んっ…はぁっ…..」
自分からのキスははじめてだなと思いつつ、精一杯攻める。
少しでも自分の気持ちを知ってほしかった。どれだけあなたを想っているかを。
とどめに唇を離し、耳もとで甘い吐息とともに囁く。
「入れて」




「ふぁぁっ…ん…はっ….んんっ」
一気に指を突き入れられ、同時に舌を絡み取られる。
片腕で肩を押さえられ、身動きがとれない。今までになく激しかった。
「いやっ…はんっ...ぁっ…あびるちゃっ……」
無意識に振ってしまう腰にも、思わず漏れる喘ぎ声にも、
聞こえてくるいやらしい水音にももう羞恥心はない。
「はぁっ…や……くっ…ぁっ!………っああぁぁ!」
押し寄せる快楽に目の前が真っ白になった。





「『入れて』、かわいかったよ」
「にやにやしながら言わないで」
二人での登校。目が覚めたときには朝だった。
「嬉しかったな」
「何が?」
「奈美ちゃんから攻められて」
自身の唇に指をおきながら覗き込むように言われて、顔が一気にあつくなる。
「愛されてるって思っちゃった」
自分から告白すると、何となく不安になるのよ。
あびるちゃんはそう続けると、前を向いていきなり足を速めた。
「ちょ、速いよ!」
「奈美ちゃんが遅いんでしょ。普通だから」
「普通って言うな!というか意味通ってないよそれ」
「知らなーい」

あなたの顔が赤く染まっていたのは、きっと気のせいじゃない。


― end―

(奈美×可符香)涙にむせぶ夢を見た

「あなたぐらいの時期の子はとても多感なのね。だから、色んなことを意識し始めるの。
それでなまじ知識ばかり蓄えてるからたくさん勘違いもしちゃうの。
下手に意識しないようにすればするほど考えちゃうから気にしないのが一番よ」
智恵先生は私にこう教えてくれた。

私は最近悩みを抱えていた。
ことの始まりは一つの夢。
私は一人泣いていた。
何で泣いていたかは思い出せない。
声を上げて泣いていたら、誰かが私の名前を呼んだ。
辺りを見渡すと私は学校の屋上にいて、まさに飛び降りようとしていた。
ぼんやりとそうしないといけない気がしたのだ。
足を前に出そうとした瞬間、可符香ちゃんが手を引いてくれて、彼女の胸でまた激しく泣いた。
何も言わずに撫で続けてくれる彼女にとても安心した。
可符香ちゃんが大丈夫だよと私にそっと耳打ちしキスをする。
そこで私は目を覚ました。
自分でも分かる程、顔が真っ赤になっていた。以来、夢には必ず彼女が出てくる。
この夢を見てから可符香ちゃんを意識してしまい、彼女とまともに話が交わせなくなってしまった私は智恵先生に相談した。
そして先生は教えてくれた。


意識をするなと言われても寝ても覚めても可符香ちゃんのことで一杯なのに。
昼休みに私は一人ため息をつく。
「どうしたの奈美ちゃん?浮かない顔して」
隙を突かれる。
突然話しかけられ、油断していた私は相当焦った。
返事を笑顔で待つ彼女に私は混乱する。
「また普通な自分に嫌気がさしていたのかな?」
人差し指を立て、顔を近づけてくる。
みるみる自分の顔が真っ赤になってくる。
私は何も言わずに教室を出てしまった。

「もう辛いです。毎日夢に出てくるし」
私はその日、再び智恵先生の元に足を向けた。
「それなのに実際に会うとまともに会話が出来ないし」
黙って智恵先生は私の話を聞いていた。
「あなたは彼女をどう思ってるの?」
頬杖をつきながら智恵先生がした質問に私は何も答えられなかった。
「毎日夢に見るのならそれは恋ね」
智恵先生は簡単にそう言った。
自分でも分かっていたことだったが人に言われると、不思議な気がする。
「あなたの悩みを解消するには彼女に思いを告げるしかないわね」
「それって告白ってことですか?」
智恵先生が頷く。
そしてカウンセラー室を出て、鍵を持ってきてくれた。
「今からでも行ってきなさい」
笑いながら渡してくれた鍵には屋上と書かれた紙が付いていた。


教室に彼女はいた。
何をするわけでもなく、ぼうとしている姿が何故か自分と被っている気がした。
「可符香ちゃん、ちょっと来てくれない?」
彼女は少し驚いた後、ニコリと笑い、良いよと言った。
階段を上り、一番上の階まで来ると廊下の隅に扉がある。
その扉に私は鍵を差した。
可符香ちゃんは何も言わずにそれを見ていた。
「奈美ちゃんに嫌われたかと思ってたんだよ」
心地よい風が私と可符香ちゃんを包む。
彼女は髪を押さえながら私と向かいあった。
「そのことなんだけどね」
丁寧に言葉を探す。
告白すると決めたのは少し前なのだ。
なかなか口に出来ない。
「最近、可符香ちゃんが夢に出てくるんだ」
怖くて顔を上げられない。
「よく言うじゃん。その人のことばかり考えてると夢にまで出てくるって」
少しずつ核心に迫っていく。
「でね、私思ったんだけどね」
風はいつの間にか止んでいた。
「可符香ちゃんが好きなのかなあって」
ちらりと目を彼女に向けた。
まるで魂が抜けたかのように彼女は立ち尽くしていた。


この感覚はデジャヴだろうか。
いや違う。あの夢だ。
全てのきっかけになったあの日の夢と同じ光景に私は立っていた。
あの夢の中で私は一人泣いて死のうとしていた。
その意味が分かろうとしていた。
沈黙に私は耐えきれなくなっていた。
目が潤む。
「昔の人はね逆のことを言ったんだよ」
突然可符香ちゃんは言った。
「何の話?」
震えた声で私が聞く。
「昔の人は、夢に知り合いが出てくるのはその人に強く思われているからって考えていたの」
そう言って可符香ちゃんは私にキスをした。

(晴美×千里)夢みたあとで

「あっ!」
千里のそこはもう既に洪水のようで、中は煮えたぎるように熱くなっていた。
「こんなにしちゃって…そんなに私としたかったの?」
「ちっ…が」
言葉とは裏腹に確かな熱を帯びたその声が、放課後の誰もいない教室に響き渡る。
「ふふ…ウソツキ」
そしてまた指を深く突き入れる。
「んぁっ!」
「可愛い声出しちゃって…ホント千里はエッチなんだから」
「や…そんなの…あっ!」
身をよじり微かに抵抗するそぶりをするも、
その体を快楽に身を委ね始めているのが手に取る様にわかった。
「じゃ、そろそろ私も気持ちよくさせてもらおっかな」
そういって私は自らのショーツに手をかける。
「え…?ちょっ!は、晴美!?」
千里が驚いて声をあげる。
それはそうだ。
彼女の目の前には、女の私にはあるはずの無いものがあるのだから。
「ななななんでそんなものが!?」
「細かい事気にしないの♪」
パクパクと口を開けて半ば放心状態の千里を机の上に押し倒す。
「あっ!や…晴美っ、ダメ!」
「入れるよ」
そう言って、千里の中へと侵入させた…



――――――――――――――。

「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・」
晴美の部屋の中、昨夜の彼女の夢日記を読み終えた無言の私を、晴美がじっと眺めている。
「だから…やめた方がいいって言ったのに…」
「だって!…あ、え…と…」
言い返そうするが、日記の内容が頭を過ぎって口ごもってしまう。
「ま、まさかこんな事書いてるなんて思わないじゃない!」
「そんな事言われても…、こういう夢を見ちゃったんだからさ〜」
あっけらかんと答える晴美に軽く苛立つ。
「睡眠学習はどうしたのよ!」
「だって〜、テスト終わったばっかりだもん、勉強からは離れたいじゃない」
昼休み、なんとなく晴美に夢日記をさぼってないかを聞くと、
何故か焦ったような顔を浮かべたので怪しく思い、確認するべく放課後晴美の家まで押しかけた。
それでもなお読むのを止めるのでますます怪しくなって、制止を振り切り日記を読んだら…
まさか…こんな…
「つーか、こんな夢見るな!」
「そんな無茶な…」
「大体、よく寝起きでこんなの書けるわね…」
まだ頭から日記の情景が離れない中、精一杯晴美を睨む。
「うーん、もしかして私、欲求不満なのかなぁ?」
「し、知らないわよそんなの!」
この子は何という質問をするんだろう…
「もしかしたら今夜もこんな夢見ちゃうかもなぁ」
「なっ…や、やめてよ!」
「ええ〜」
「ええ〜じゃない!」
何やら不満げな晴美の声に、すかさず一括する。
「じゃあ仕方ない…今すぐさせて貰おっかな…」
一変して晴美が浮かべた不敵な笑みに、背筋を冷たいものが走る。
「え…何を…?」
恐る恐る聞き返す。
「何って…夢の続きを、だよ」
そう言って、晴美がスカートと下着を脱ぎ降ろす、
そこには…



――――――――――――――。

「…り、…千里」
「…へっ?」
晴美の呼ぶ声で目が覚めた。
「おはよ、朝だよ千里」
「うん…あっ、おはよう…」
先日テストを終え、間を開けず同人の締切りが迫る晴美を手伝うために、
晴美の部屋で昨夜遅くまで作業をしていたのだが、
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
「あっ、ゴメン、私寝ちゃってたのね…」
「ん、大丈夫大丈夫、ちゃんと原稿終わったからさ
私もちょっと寝ちゃった」
「そう、よかった…」
ほっと胸を撫で下ろす。
「あっ、そうだ、夢日記、書かなきゃいけないね…」
「え?」
晴美が仕方なさそうに日記帳を手に取る。
それを見て自分の顔が青ざめるのが分かった。
「ダメ!!」
晴美の手から日記帳を奪い取る。
「へ?なんで?」
よく解らないという顔で晴美は目を丸くする。
「と…とにかくいいから!」
「わ、私は別にいいけど…千里は?」
そう言われて先程の夢を思い出し、今度は一転して顔が熱くなる。
「私もいい!」
「え、どうして?」
「あっ、えっと…や、やっぱり夢日記は精神的によくないわ!」
私の理不尽なほどの変わり身の早さに釈然としない表情を浮かべるも
「わ、分かって貰えたなら嬉しいけど…」
と、晴美はとりあえず納得してくれたようだ。
「コーヒーでも飲む?」
「え、ええ、頂くわ…」
晴美は立ち上がって台所に向かおうとする。
「恐ろしいものね…夢日記って…」
「??」
私の言葉に怪訝そうな顔をする晴美を横目に、
私は夢日記の怖さをひとり噛み締めた。

(晴美×千里)Time is


「今年もお世話になったわね」

そう言って軽く頭を下げる千里をまたか、といった気持ちを胸に晴美がちらりと見た。
もちろん表情にはそういった類の感情は出さないように、いつもの通りの顔をしておく。
「律義だねぇ」
そう言ってほんの少しだけ苦さを含ませた表情を見せると、何を今更と千里がぴくりと右眉を上げた。
「今に始まった事じゃないでしょう」
千里の言葉にそれもそうかと晴美は自嘲に近い笑みをこぼす。

千里の言う『今年』は1月から始まり、12月で終わる方ではなく
4月から始まり、3月で終わる方、つまり年度の方を指している。
もちろん前者の方の場合もきっちりと挨拶は忘れないのだが。

気付けば暦は3月を知らせ、進級のやら卒業の季節を迎えていた。
単位が足りないなどに該当する生徒は慌ただしい季節でもある。
幸い千里も晴美もその対象には該当していない。

「ついこの間新学期が始まったかと思ってたんだけどね」
まるでほんの数日前のように思えた新学期を思いながら晴美がぽつりと呟いた。
「時間は必ず経つものだわ」
いくら貴女の感覚が新学期のままであったとしてもね。
溜め息混じりの千里の言葉がちくりと刺さった。

そんな事はもちろん晴美にもわかっている。
時が過ぎればそれに伴い少しづつ変化も訪れる。
日々の中では微々たるものでも、年月として見れば
その変化もはっきりと目に見えるものになるだろう。

今は大きく変わりはしない毎日だけど、いつかは大きく変わる日が来るのだろうか。
その日が来た時、こんな風に隣で小言を言う彼女はまだ傍にいるのかな。
不意にそんな考えが頭に過ぎり、見えない未来に心が震える。
言い表せない漠然とした不安が胸を満たした。

すっかり黙り込んでしまった晴美を見ながら、千里は思わず出そうになった溜め息に気付きそれを飲み込む。
このまま溜め息が口から出てしまっても晴美はその事には気付かないだろう。
それほどに晴美はぼんやりと、まるで心を失ったようにただただ一点を見つめ考え込んでいた。
その表情をじっと見つめたが千里の視線に気付く様子は全く感じられない。
やれやれ、と少しばかり表情を曇らせてみる。
そしてゆっくりと右手を持ち上げて、その手の動きにも気付かない晴美の顔の傍へと運んだ。


「ねぇ」

千里の声にようやく我に返った晴美の視線が捕らえたものは千里の手。
あれ、と思ったと同時にその手が、晴美の額へと伸びた。
こつんと額を小突かれ、きょとんとした表情を千里に向ける。

「また何か余計な事を考えたでしょう」
呆れたような表情に僅かに強い口調。
何が、と口を開く前に千里がずい、と顔を近付けた。
「そういう変なところで考え事する癖は昔っから変わらないわよね」
千里の言葉に、晴美がむ、と顔をしかめた。

「千里にとっては大した事じゃないかもしれないけどさー」
「本当に貴女って不思議だわ」
晴美の言葉を遮る様に千里の言葉が重なる。
「ちょっとはこっちの話も聞いてくれませんかねぇ」
少しばかり不満を含んだ言葉にも、千里は呆れ顔を見せるだけだった。

そこで晴美はふとある事に気付く。
昔から変わらない。さっきの千里の言葉だ。
変化を恐れていたはずだったのに、千里の口から出た言葉はそれを否定するものだったからだ。

呆れ顔でぶつぶつと説教をする千里の表情を見ると
さっきまで考えていた事はだんだんと掻き消えて、今度は変わりに笑みがこみ上げてきた。
へらへらと微笑う晴美に気付いた千里は怪訝そうな表情で様子を伺っている。

「何よ、気持ち悪い」
「いやー、変わらないなって」
まだにやけた表情のまま晴美は千里へと言葉を投げ掛ける。
「千里のそういうトコロも昔っから変わらないなって」
晴美の言葉に千里が面食らったような表情を見せた後、ふいと顔を逸らす。


「そう簡単に変わらないわよ」


千里の放った言葉が、晴美の頭に反響を与える。
さっきの答えはこんなに簡単な事だったのだ。

今まで築きあげた物をそんな簡単に手放してたまるものか。
そんな事を思いながら晴美はゆっくりと目を閉じた。


「…そうだよね、うん、そうだよ」
自分に言い聞かせるような言葉と共にくすくすと笑いが晴美の口を付いて出た。
「さっきから急に考え込んだり、笑い出したり、一体何なのよ…」
ころころと表情の変わる晴美を訳がわからないといった顔をしながら千里が様子を伺う。

「やー、うん。何でもない」
誤魔化すみたいに笑ってみせると、その態度が気に入らなかったらしい千里がむ、と顔をしかめた。
「何でもないはずないでしょう」
晴美の誤魔化しを許さないと千里が噛み付くが、それも笑って流してしまう。

「気にしない、気にしない」
ひらひらと手を振り、無かったことにしようとする仕草に
完全に納得した訳ではない千里だったが、これ以上追及する事を諦めた。
どうせ理由を教えてはくれない事を知っているからだ。

「ちっとも変わらないわね、その性格」
「お互い様だよ」

晴美の言葉にそれもそうか、人の事は言えないなと千里もこれ以上突っ込みを入れる事を諦めた。

「まぁ、とにかく来年度もよろしく」
あともう1ヶ月もしない内に来る、新たな年度の挨拶を告げる千里を見て晴美がにこりと笑った。
「ええ、こちらこそ」
そう言ってから、何かに気付いたような表情を見せる。

「や、違った」
「え?」

「『これからも、ずっと』だよね?」
晴美の言葉の意味を理解するのに少々時間がかかっているらしく
しばらく不思議そうな表情をしていた千里だったが
言葉の意図を理解したらしく、少し驚いたような表情を見せる。

「…どっちでも一緒でしょ」
「一緒じゃないよ」
そう言って笑う晴美に、千里は困ったような表情を見せた。


時が過ぎても、変わらないものもきっとある。


それは貴女が貴女であり、私が私である事。




―END―

(あびる×奈美)ペットの調教

放課後、教室で二人は重なり合っていた。
椅子に座ったあびるが奈美の椅子となり、ベルトのようにあびるの腕が奈美を締め付けている。
「ダメだよ、あびるちゃん」
あびるの手が奈美の体をまさぐる。
その手を追うように奈美は抵抗をしたが、掴むと首すじを舌でいじられ、再び逃してしまう。
「なんでダメなの?」
手で柔らかさを楽しみ、奈美の首から肩のラインに顔をうずめ鼻で吸う。
その一連の行為をあびるは囁き声を交え繰り返していた。
「誰かに見られたら嫌でしょ」
「見られない場所なら良いの?」
「そういう意味じゃなくて…」
「それなら私の部屋に行く?奈美ちゃん家でも良いよ?」
やはり学校では限界がある。
あびるにしたら、ここで終えるには余りにも惜しかったし、耐えれなかった。
「だから…」
「それかホテルにでも行く?私は良いよ」
「なんでそういうことを…」
「いっそ公園の陰とかトイレでも良いよ。そっちの方がドキドキするし」

帰り道にある公園に着くと、二人は白々しく公衆便所に入った。
下品な芳香剤の香りがトイレの汚さを倍増させている。
同じ個室に入る二人。
奈美の手を引き堂々と入るあびるに対し、奈美はしきりに周りを気にしていた。
「こんな時間に誰も来ないよ」
「うん」
便座に蓋をし、教室の時と同じように、だが今度は向かい合うように、二人は座った。
外で冷えた太ももの温度を重ねることで渡し合い、次第に暖まってくると心地よく肌に馴染んでいった。
「何しよっか?」
照れてまともに顔を上げられない奈美を満足そうに微笑みながらみていたあびる。
彼女の笑みは優しさだとか慈悲というより、独占に成功した支配者の喜びに近かった。
「言ってくれないと分からないよ?」
頭を撫でながら詰問していく。
奈美から答えは返ってくることはないだろう。
あびるはそう観念して、もしくは返ってこないことも楽しみの一環であるかのように、唇を彼女に押し付け始めた。
「私の可愛いペット」
背中に回した手に、可能な限りくっつこうと、力を入れていく。

制服のシワが二人の体を浮き彫りにしていく。
あびるの右手は下りていき、スカートとセーラー服の間から中に侵入していった。
その間、奈美はただ受け入れることしか出来ず、彼女の激しい攻めから振り落とされないようにしがみつくことしか出来ないでいた。
スカートに手を入れる。
奈美の顔つきが変わった。
「もういいよ、やめて」
「やだ」
「お願い、怖いの」
「だめ」
彼女の制止を唇で覆い喋れなくしてしまうあびる。
必死に抵抗しようと両手であびるを離そうとする。
しかし、箇所に触られる度に力が抜け間抜けな声を出してはあびるの興奮を手伝う形になっていた。

あびるの顔に湿ったものが付いた。
奈美を見ると瞳が潤んでいる。
「止めてよお」
「泣いてるの?」
あびるが謝ると奈美は涙も拭かずに帰ってしまった。

あびるは家路に着きながら自分の行いを回想した。
彼女に告白されて内心喜んでいた自分は、浮かれて影を潜めていた。
ああ、思い出した。私が彼女にしていたことは、恋愛だとか良いものではなかった。
これは動物の調教だ。
自分の思い通りの行動をさせる為にいつもしていた調教を彼女にしていたのだ。
いつからかのぼせていた私は、彼女のことも考えずにまるで見せ物の動物を相手しているように接していたのだ。
彼女のことが好きなのに自分のことしか考えていなかった。
背中から照らす夕日があびるの影を黒く黒く染めていた。

次の日。
奈美は元気良く登校をしてきた。
あびるにも変わりなく挨拶を交わした。
ただそれは恋人の時の彼女ではなく、友人だった時の彼女だと、あびるは容易に気づくことが出来た。
どこかよそよそしい、二人の間に一つの層が出来ているような気分だった。
あびるの落胆は昼の時間に限りをみせた。
奈美はあびるを昼食に誘わなかったのだ。
友人以下になったのか。
あびるはそう思ったが、顔には決して出さなかった。
しかし、この事実に彼女は確実に傷付いていた。
授業はまるで頭に入らない。
後悔に押し潰されそうになった。
まともに顔も上げれずにいたため、あびるはたまにちらちらと奈美が見ていたことに気づくこともなかった。

教室から生徒が一人、また一人と去っていく。
窓からは眩しい夕景が覗ける。
あびるは一人ため息をつき机にうつ伏せていた。
夕日を見ていたら昨日のことを思い出してくる。
もう帰ろうか、あびるが席を立とうとした時だった。
肩を叩かれ振り替えると、申し訳なさそうな顔をして奈美が立っている。
「早く帰ろ?」
予期しないことにあびるはしばらく黙ってしまった。
「なんで?許してくれるの?」
「別に怒ってないよ」
「本当に?」
「うん。ただね…」
恥ずかしそうに奈美は言った。
「ああいうことは、もっとちゃんとした場所でしたいかな」
奈美は手のひらを上に向けあびるに出した。
「お手」
あびるは丸めた手を奈美の手のひらにそっと乗せた。
「私の言うことも聞いてね」
奈美がそう言って笑うとあびるもつられて笑った。
あびるは心から楽しそうに笑っていた。

(カエレ+芽留)少女と嘘とやさしい時間

〜カエレと芽留〜
「暇ね」
「…….(めるめる)」
「…….」
「……(めるめる)」
「…ねえ」
「……(めるめる)」
「誰に打ってるの?」
「……」
(めるめる)
ピロリン♪
『お前には関係ない』
「……」
「…….」
「あっ、そ」

「……ぁっ!」
「ふふ、携帯もらいっ!」
「!…!…」
「ああ、もう、いいから。ちょっとくらいいいじゃない」
「…っ!」
「だいたいねえ。私が隣にいるのに他人にメールなんて……え…これ、だれ?」
「…….」
「ちょ、ちょっと!誰よ!私、しらないわよ、こんな名前!」
「…….」

(めるめる)
『今、付き合ってる奴』
「……はあっ!?どういうことっ!なんでっ、ど、どうして!?」
『お前に言ったら、面倒くさいじゃねえか』
「面倒くさいって……あ…そう…そういうこと……私よりもその人の方がずっといいってこと…..」
「………」
「……そう…..」


「……」
「……?」
(めるめる)
『お、おい!何茫然自失になってんだよ。反応しろよ!』
「……」
『おい!』
「……っ…あ…え……お、音無、さん…?」
「……?」

〜カエレと芽留〜
「暇ね」
「…….(めるめる)」
「…….」
「……(めるめる)」
「…ねえ」
「……(めるめる)」
「誰に打ってるの?」
「……」
(めるめる)
ピロリン♪
『お前には関係ない』
「……」
「…….」
「あっ、そ」

「……ぁっ!」
「ふふ、携帯もらいっ!」
「!…!…」
「ああ、もう、いいから。ちょっとくらいいいじゃない」
「…っ!」
「だいたいねえ。私が隣にいるのに他人にメールなんて……え…これ、だれ?」
「…….」
「ちょ、ちょっと!誰よ!私、しらないわよ、こんな名前!」
「…….」

(めるめる)
『今、付き合ってる奴』
「……はあっ!?どういうことっ!なんでっ、ど、どうして!?」
『お前に言ったら、面倒くさいじゃねえか』
「面倒くさいって……あ…そう…そういうこと……私よりもその人の方がずっといいってこと…..」
「………」
「……そう…..」


「……」
「……?」
(めるめる)
『お、おい!何茫然自失になってんだよ。反応しろよ!』
「……」
『おい!』
「……っ…あ…え……お、音無、さん…?」
「……?」

「…..え?」
「……..」
「あっ?……ああっ!」
『どうかしのかよ』
「す、すいません。私、今カエレじゃなくて、楓です!」
「…?」
「急に申し訳ございません。それが…私もよくわからないのですが、
カエレの方が、急に私に変わってほしいと言われて…」
「…….」
『あいつ、何か言ってたか?』
「…それが、今は私に構わないでくれ、と言っていました」
「……っく…プッ…ククク……」
「どうかしたんですか?カエレ、涙を流していたように見えたので…」
「...ップ…フフフッ……」
「あ、あの…音無さん…」
『いや、お前は気にしないでいいから(笑)』
「…気にするなといわれましても…っ、音無さん!?」
「フッ…フフフッッ!…ップ….」
「あ、あの…..」
「フフフッ….」
(あいつ、意外と騙されやすいんだなあ…可愛いところあるじゃねえか。
それにしてもねえ…...プッ…フフフッ….)