(あびる×晴美)Sugarless GiRLの君達は

「あ、あのさ…あびるちゃん」
「何?」
「…いや、何にも無い」
「そう…」
「……」
それから私達は沈黙を続けた。

気まずい。この気まずい沈黙は私にとって耐えられないものだった。
だがこれを打破しようにも、それを打ち破る手立ては思い浮かばなかった。
何かを話そうにも、二人の間に共通する話題など無かった。
私達はまったく接点が無いんだなあ、とつぐつぐ思い知らされた。

彼女はどう思っているのだろうか。
私はちらりと視線を上げた。
あびるちゃんは頬杖をついて、こっちを見ていた。
視線が合うと、美しい顔がにっこりと笑顔になった。
私の気持ちがわかっているのだろうか。
それは無関心なのか、見透かしているのかは、私には判断がつかなかった。


私の部屋に彼女が来たのはこれが初めてだった。
正直、私の部屋は「アレ」なので彼女には見せたくなかった。
もし来るにせよ、ある程度は隠すよ。
けれどあびるちゃんは来た。急に。
前持った連絡もせず、日曜日の昼に私の家の前で立っていたのだ。
家に入れないわけにはいかなかったのだが、
その結果私の恥ずかしい所をすべて見られてしまった。
趣味満載の私の部屋を彼女はどう思ったのだろうか。
気持ち悪がられたり、嫌われたりしないだろうか。
予測とは裏腹に、あびるちゃんは微笑んでいた。
その笑みからは本意をうかがい知ることは出来なかった。
予想通り、ということなのだろうか。
それはそれでショックなのだけれど……




時計の針の音がいやに大きく聞こえた。
何かしなきゃ、何かしなきゃ。
その時、私はとっさに閃いた。
「そ、そうだ!!あびるちゃん、ゲームしない!?」
「…あんまりしたことがないけど、教えてくれるんなら」
「うん!教えてあげる。だから、ね!早くしよう!」
私はそう言って立ち上がり、すぐさまゲームのスイッチを入れた。
今時、女子高校生がゲームで暇をつぶすなんて、と思われても仕方が無いが
私がこの沈黙を破る方法はそれくらいしか思いつかなかった。
な、情けない…

「どうすればいいの?」
「えっと、このボタンはね」
「うん」
私はあびるちゃんに操作の説明をしていった。
それからゲームを起動して、二人で対戦していった。
最初はぎこちなかった彼女の操作も、だんだんと慣れていった。
「お、面白い…?」
「うん」
彼女の短い応答は私に少し安堵をもたらした。
よかった、よかった。今日はこれで穏便に…。

私がそんなことを考えていたとき、ふと画面のあびるちゃんのキャラクターがとまっているのが見えた。
どうしんたんだろう。私はちらりと彼女を見た。
じぃーっ。
どうしてか、彼女は私のほうをじっと凝視してくれた。
「え…どうしたの…?」
「晴美ちゃんを見てるの」
「ど、どうして?」
「可愛いなあって思って」
どきん。体がかあっと熱くなるのを感じた。
そ、そんなこといきなり言わなくても。
「…ゲームしないの…?」
「晴美ちゃんを見ているほうが、楽しいよ」
そう言って、あびるちゃんは微笑んだ。


いつもこうなのだ。彼女は。
何を考えているかわからないあびるちゃんは、いつもこうやって私を弄ぶ。
遊ばれている。
私は何だかもやもやとした気分になった。

「あ、あのさ…あびるちゃん」
「何?」
「…どうして、私のことが好きなの……?」

私は思い切って言った。
ずっと考えていたことだった。
先月、私はあびるちゃんから告白された。
今でも思い出すと、どうしてか恥ずかしくなる。

どうして私なんて好きになったんだろう。
私と彼女とでは大きく差があるように感じていた。
とても綺麗だし、スタイルもいい。勉強だってできる。
男子なら誰だって告白したくなるに決まっている。
けど彼女は私を選んだ。漫画眼鏡の私を。


「どうして…って?」
「だから、なんで私なんかが好きなの!?
 私みたいなオタクなんかじゃなくっても、他にいい人がたくさんいるじゃない!」
「…それって、私を好きじゃないってこと?」
「ち、違うよ!好きだよ!大好きだよ!!けど…どうして私なのかな……」
さらりと私は恥ずかしいことを言っているな。
するとあびるちゃんは考え始めた。
そしてぽん、っと手をたたいた。
「…胸が大きいからかな?」
「……本気で言ってるの?」
「ううん」
彼女はそう言って、また私を弄ぶ。
てか、あんたも十分大きいよ。


「だから!私は真面目に」
「私は晴美ちゃんが好きだよ」
私の声を遮って、彼女は短く、力強いその言葉を発した。
「な…!」
単純なその愛の言葉に、私はまた恥ずかしくなった。
「可愛いところ。かっこいいところ。
 容姿も性格も。趣味嗜好も。全部が大好きだよ。
 けどそれが全てじゃないの」
「…どういうこと?」
「どこかがいいから好きって言うことじゃないの。
 そういう理屈じゃないの。私は言葉では表せることができないくらい、
 あなたを愛している。そこに理由は必要?」
思わず俯いてしまった。そんなことを言われたら、言い返せないじゃない。

すっと、あびるちゃんの伸ばした手が私の頬を触れた。
彼女は顔を近くに寄せた。頬が少し桃色に染まっていた。
「キスしてもいい?」
「……うん」
私はゆっくり床に押し倒され、キスされた。
それは限りなく甘かった。とろけそうなくらい。

あびるちゃんがゆっくり唇を離した。
彼女はまた微笑んでいた。
「さっきの答えってさ、答えになってないよね」
「そう?」
今はそんなことどうでもよかった。
ただただ私は愛されていることの喜びが、心を占めていた。
「ねえ」
「何?」
「もう一回、してもいい?」
どうせ断れないことを知っているのに。
「あびるちゃんってさ……ずるいよね」
「何が?」
私は答えなかった。そうして、本日二回目のキスをしたのだった。
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